批評社より刊行された『しんとく丸の栄光と悲惨 上方文化の源流を訪ねて 業縁と輪廻の世界』(著:福井栄一)の装画制作のご依頼をいただきました。

制作したイラストは以下のページでご覧いただけます。
この記事では、装画制作のさらなる詳細と、本書がどのような本なのか、そしておすすめポイントなどをお伝えします。

イラスト制作過程

今回のご依頼は、装丁を手掛けたブックデザイナーの臼井新太郎さんよりいただき、説経節「しんとく丸」の話自体はおどろおどろしいものの、装画は反対に静謐な画風の絵でいきたいとのご要望のもと制作しました。

「主人公であるしんとく丸を描いてほしい」「おどろおどろしい絵にはならないように」という要件以外は、比較的自由に表現してOKだったため、日本画風の落ち着いた雰囲気や透明感などを表そうと心掛けながら、ラフを2点制作してご提案しました。

2案とも、四天王寺の稚児舞の舞い手に選ばれた幸福だった頃のしんとく丸と、その後義母の呪いによって失明し、業病を患って物乞いになる不幸のしんとく丸の対比を意識して制作しています。
また、稚児舞の衣装は、実際の四天王寺の聖霊会で子供たちが踊る「童舞・胡蝶」の衣装を参考にしており、物乞いとなったしんとく丸も、おどろおどろしさが出ないよう、醜い容姿ではなく落ちぶれてはいても美少年のままのしんとく丸にしています。

どちらも好評いただけたようなのですが、最終的に①のラフの方に決定し、以下のように完成させていきました。

どんな本?ーおすすめポイントー

本書は説経節の象徴的な演目の一つである「しんとく丸」の解説本です。

説経節とは何か?どのように生まれ、時代によってどのように変貌していったのか、など説経節の始まりや経緯から始まり、実際にしんとく丸という物語の世界やしんとく丸自身の人物像などを丁寧に説明されています。
他の説経節の物語や様々な古典文学を例に上げたり、比較しながら解説されているため、よりしんとく丸の世界への理解が深まると感じました。

そして、しんとく丸の物語は長い間語り継がれてきた中で、日本の文芸や芸能に多大な影響を与え、能や落語・演劇・小説などに姿を変えて現代まで生き続けています。
これらの芸能に触れたことのある方は、ぜひこの本を読んでみてほしいと思います。
読む前と後では、その理解度や魅力がさらに増すことでしょう。

「しんとく丸の栄光と悲惨」表1装丁
しんとく丸の栄光と悲惨: 上方文化の源流を訪ねて 業縁と輪廻の世界

福井栄一(著)

今回のような日本画風の和風タッチのイラストや、書籍の装画・挿絵といったご依頼も随時承っております。
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