イラスト制作のお問い合わせをいただき、ご依頼内容の詳細を伺って正式発注となりましたら、まず「ラフ画」を制作します。

ラフ画とは、大まかなイメージのイラストや概略図のことで、「ラフ案」「ラフスケッチ」などとも言われ、あるいは単に「ラフ」と言う場合もあります。

ご依頼者様は、まずこのラフ画をご確認いただくことで、完成イラストをイメージしやすくなり、「もう少しこうしてほしい」といった修正や要望も見つけやすくなります。

ラフ画はイラスト制作において重要な工程ですが、イラストが完成すると必要のないものになるためあまり表に出てきません。
そこで今回は、イラストレーターにイラストを依頼したいと考えていらっしゃる方向けに、実際にラフ画とはどういったものなのか、それが最終的にどんなイラストに完成したのかをご紹介したいと思います。

ラフ画と完成作品の比較

ラフその1:書籍の装画・表紙イラスト(個人作品)

以下は、装画のコンペディションに応募した個人作品で、夏目漱石の小説「坊っちゃん」の装画を想定して制作したイラストです。
左のラフ画をもとに完成させたものが右になります。

私の場合はラフと言っても「下書き」に近い形で制作しており、どういった構図にするか、色はどうするかなどをある程度決定します。

ラフその2:ファッションイラスト(個人作品)

女性ファッション誌やアパレルブランドなどに使われるイラストを想定して描いたイラストのラフ画(左)と完成作品(右)です。

ご依頼者様にはまずラフ画をご確認いただき、必要に応じて修正いたしますので、修正をご希望の場合はご遠慮無くご指摘いただければと思います。
ラフのOKをいただいた後に仕上げ作業にへと進み、イラストを完成させていきます。

ラフその3:モノクロイラスト(ご依頼作品)

実際にご依頼いただいて、月刊文芸誌に連載された小説の挿絵を制作しました。
以下は連載第7回の挿絵のラフ画で、2点制作してご提案しました。
ご依頼者である編集者様と話し合い、第7回の小説内容やイメージにより合っているということで、右側の花のラフ画が採用されました。

そして、完成した挿絵がこちらです。

「共謀小説家」7話・挿絵2
完成作品

このように、複数のラフ画をご提案し、ご依頼者様にその中から選んでいただいたものを仕上げて完成させていく場合もあります。

ラフその4:歴史系イラスト(ご依頼作品)

こちらも実際にご依頼いただいて制作したもので、戦国武将を紹介する児童書のための人物イラストになります。
今回の場合はご依頼者様側で制作進行の手順が決まっており、ラフ画は着彩せずに線画のみというご指示に従って制作しました。

バストアップの武将のイラストというご依頼だったため、初めに左のラフ画1をご提案いたしましたが、ご依頼者様より「『家康の敵』というテーマのため、もっと家康を恐れさせた力強さや豪胆な表情がほしい」「衣装は甲冑姿で」というご要望をいただきましたので、右のラフ画2に修正して再度ご提案いたしました。

結果、ラフ画2でOKをいただき、着彩はその後の仕上げの工程で行いました。
完成作品がこちらです。

「くらべる戦国武将図鑑」:真田昌幸
完成作品

今回のように制作進行にご依頼者様のご希望やご指示等がある場合は、それに則って制作いたします。

「ラフ画」の重要性

ご満足いただけるイラストを完成させるには、ラフ画制作時にご依頼者様のご要望を反映させ、ご意見をすり合わせることがとても重要です。

このラフ段階までのすり合わせがうまくいかずに仕上げ作業に進行してしまうと、完成間近で大きな修正や初めから描き直しになるなどのトラブルが発生する可能性があり、結果ご料金も制作スケジュールも当初の予定より多くかかってしまう、ということになりかねません。

そういったことをできるだけ避けるため、制作開始までにご依頼内容の詳細を極力確定・共有いただき、修正やご要望がある場合はラフ画制作段階でご指摘いただけますようご協力をお願いしております。
(ラフ確定後の仕上げ段階でも、色や配置の微調整程度の小さな修正は可能です。)

なお、ラフ画はイラストレーターによって様々で、細かく描き込む人もいれば、ざっくりとしたラフ画の人もいます。
今回はあくまで私の場合としてご紹介いたしました。
イラストのご依頼の際に参考にしていただければ幸いです。

イラスト制作の一連の流れは、【イラスト制作について】ページ内にてご説明しておりますのでそちらもぜひご覧ください。